地方公務員が病んで転落しつつある話

偶の理性と心の反吐を書き散らす

二級ボイラー技士免許を取る話

 こちらボイラー未経験者向けとなっております。

 現在、就職して、ボイラー取り扱いの実務に従事している、自動的に取得コースに乗っている立派な社会人の方は、特に問題なく取れるのでは。

免許を取得する条件

1.安全衛生技術試験協会が実施する学科試験に合格する。

 ほぼ毎月、全国のセンターで実施されているので機会は豊富。

 後述する講習で使うテキストだけだと知識量が不安なので、別に教本は欲しい。ボイラ協会で2級ボイラー技士教本というものを売っているが、市販されていないから入手性に難がある。amazonでも買える一級ボイラー技士教本の方が良いと思う。値段は2割程高く、厚さは倍になるが、二級はもちろん一級の試験に対応できる。

 なお、一級の免許は実務経験が必要だが、学科試験は二級免許を持っていれば受けられる。採用面接で「二級免許と一級学科合格あります!」と言ってみよう。

2.ボイラー実技講習を受講して修了証をもらう。

一般社団法人 日本ボイラ協会

 近くの支部で開催している講習を申し込む。座学2日と実技1日の計3日で、料金は25,000円程で、実務経験の代わりとしては意外に安い。実技といっても自動制御の実機の起動スイッチをオンオフするくらいで、後はPCのシミュレーションだけ。試験もない

 テキストとしてボイラー実技テキストボイラー図鑑を貰えるが、後者は実物の写真が豊富で役に立った。講習も実際の取り扱い方法がメインで、未経験者が教本を読んでもピンとこない部分が分かるから、学科試験の前に受けると無駄がない。

 

 全都道府県に支部があるわけじゃないから、近くにないと受講の難易度は高い。通える距離だとしても、遅刻せずに通うことに気を遣う。寝坊しないようにということではなく、車は渋滞、公共交通機関は遅れがあると困るということ。

 

 私は支部がそこまで遠くなかった。HPを確認したところ、受付期限が2日後に迫まった講習が満員でないのを見つけて問い合わせ、振込だの申込書の郵送では間に合わないので協会支部へ直接行って手続した。講習は新入社員だろう若い人が多かったなぁ。

学科試験の内容

kako-mon.com

 過去問をやると分かることだが、1,2回前に出たのとほとんど同じ問題が結構出る。そして、2,3年前になると問題の傾向がちょっと変わってくる。この変化がどこで起こるか分からないから油断はできないが、近い過去問を重視した方が効率は良い。

 そして昨日、2級ボイラー技士の学科試験だったのだが、ちょっと毛色が違って参った。

ボイラーの構造に関する知識

 ボイラーの構造というのは、本体だけでなく付属品(エコノマイザ、過熱器)や計測器も含む。特に計測器は種類がある上に、その各種の中にも色々な方式があるため、名称と動作原理を把握する必要がある。

 あと数値関連では、ボイラー効率やボイラー容量だけでなく、熱量や気圧、比熱そのものに関する問題もここで出る。計算問題は出ないようだが、計算方法は問われる。

ボイラーの取り扱いに関する知識

 前述のボイラー実技講習を受けていれば、大体分かる。手順、やるべき事とやってはいけない事を暗記するのではなく、なぜそうするのか理解した方がいい。理解していれば、知らなくても類推で分かることがある。

 あと、意味の分からない言葉が出てきたら必ず調べる。次の燃料・燃焼についてもそうだが、スラッジやスケール、ターンダウン比、ベーパロック、クリンカ等、私は全く知らなかった。教本ではさらっと書かれているが、さらっと流していると問題文に出たとき困る。逆に、意味さえ分かれば正誤は常識的に判断できたりする。

燃料及び燃焼に関する知識

 クレーンの原動機の知識もそうなのだが、ボイラーを扱うに際して、燃料や燃焼について知ってる必要ある? って思う。が、出るものは仕方ない。

 ボイラーの燃焼装置や、燃料がボイラーに及ぼす影響については、前述したボイラーの構造や取り扱いの延長なのでやることは同じ。燃料の特徴について、物性や燃焼時の化学変化なども問われるが、ここは覚えるしかない。 

関係法令

 「ボイラー及び圧力容器安全規則」のボイラーに関する部分と「ボイラー構造規格」から出題される。

 製造から設置まで、点検や免許についてはクレーン等と同じ構造になっている。手続きは流れを把握する。

 定期点検項目(10以上)や、ボイラーの分類(小さいと小型ボイラーになる)、資格によって扱えるボイラーの規模(伝熱面積や胴等のサイズ)など、表や数字を覚えていないと回答できない問題が結構出るので大変。

 ボイラー構造規格は附属品に関する部分以外は出題されない模様だが、こちらも数字を覚えないといけない。

 実務的、常識的にそうあるべきだからといって、法律に定められているとは限らない。

終わりに

 2級ボイラー技士はボイラー取扱作業主任者に選任できるため、「違法にならなきゃいい」程度の認識で雇用機会はあるかもしれないが、そういう事業者が法律を守るとも思えない。

 通常は、

1.ボイラー取扱技能講習(学科のみ)を受講する。

2.小型ボイラーを扱う実務に就く。

3.2級ボイラー技士免許(学科と2の実務経験)を取る。

4.ボイラーを扱う実務に就く。

5.1級ボイラー技士免許(学科と4の実務経験)を取る。

という流れなので、実務経験のない2級ボイラー技士は技能講習修了者と同レベルに扱われるかな、と想像する。

 まあ、誰だって実務経験ある人がいいよね。

 

安全衛生法関係免許というもの

 先日、移動式クレーン運転士の実技教習を修了し、クレーン・デリック運転士の学科試験を受験したわけだが、これらは労働安全衛生法という法律に定められた免許になる。

 そして、免許に関する試験を行っている安全衛生技術試験協会のHPを見ると、免許が必要な資格がずらっと並んでいる。全22種。

資格の紹介

 こうやって並べられると、他に取れる資格はないかと探してみたくなるのが人情というものだが、一通り見て、世知辛さ(というか当然かもしれないが)を感じて見なかったことにしたくなった。

 

 基本的に、実務経験がないと免許は取れない。

 

 実技があるとはいえ試験だけで免許を取れるクレーンの方が少数派で、学科試験の受験は資格不要でも、免許申請の段階で実務経験の証明を求められる

 意外なのは潜水士が学科試験合格のみで免許を取得できることだが、当然、知識だけで水に潜れるわけもなく、別にダイバーのライセンスが必要だろう。

 まあ、名称からして「○○運転士」は自動車免許の同類だが、「○○主任者」とか「○○管理者」は、実務未経験者がやることではないから、仕方ない。「○○士」に実務経験が必要というのは、徒弟制度みたいなものだろう。

 

 と思いつつ見ていると、二級ボイラー技士発破技士は実務経験ではなく指定講習の受講で足りることが分かった。しかし、発破技士は講習がほとんど行われていないと思われる上、扱っている火薬類保安協会のHP自体が適当な内容で、外部者には敷居が高い。少し調べると、実務面でも閉じた村社会を感じる。その気になったらダイナマイトを箱ごと奪取できそうなので、就職時は警察以上に調査される社会かもしれない。

 その点、ボイラー技士の講習は日本ボイラ協会のHPで容易に見つけられる。開催頻度も高い。発破とボイラー、日本における需要を考えれば当たり前か。

 

 クレーンの学科試験で調子に乗った私は、二級ボイラー技士の免許取得を試みるのであった。

 

 

 

 

中型自動車免許の限定解除をした話。

 私が自動車免許を取得したのは2003年。道交法の改正は2007年なので、現在は中型免許(8tに限る)になっている。

 

 普段は普通車しか運転しないので、率直に言って全く必要ない。仮にドライバーに転職するとしても、今でも4tトラックなら運転できるし、大型の運転には大型免許が必要だ。

 

 ではなぜか? 今は何でもいいから資格取ってる状況だから。

 

 もちろん、その不合理な理由をを踏まえた上での合理的な理由もある。

 

1.大特を取った教習所なら、入校料がかからず5万円で取れる。

2.大型の教習料金を見たら、所持免許が中型(8t限定)か中型かで差額が5万円。

3.中型も大型も教習車はMTだが、私はMTについてはペーパードライバー。

4.教習は実技のみで5時間+修了検定なので、時間的には手軽。

 

 「使いもしないのに」と言い出すと、大特も移動式クレーンも使わないのだから今更である。というわけで、やってみた。

中型車の特徴(教習時)

1.運転席が右前輪のほぼ真上にある。自分が車体右側の縁石の真上にいる感じでも脱輪しない。

2.内輪差が大きいので、曲がる時は車線の真ん中まで出てからハンドルを切る感じにしないと脱輪する。

3.ブレーキの効きがすごく良い。普通車の感覚で踏むと急ブレーキになる。当然、エンストする。

4.車体が長く、後輪より後ろも長いので、ハンドルを切った時に車体後端の振れも大きい。反対車線にはみ出たり、壁にぶつかったりするかもしれない。

5.左サイドミラーに車体前面を映すものがあるので、停止線などとの位置関係が分かり易い。ただし、停止線を超えてはいけないのはバンパーではなくサイドミラー(車体より前方に突き出ている)である。

1時間目

 最初は教官がコースを1周して、曲がり方(普通車とは内輪差が違う)、ブレーキの踏み方などを軽く説明され、運転を替わる。

 当然の結果、ハンドルやブレーキ以前にクラッチとギアチェンジでいっぱいいっぱい。発進の度にエンスト、止まる度にエンスト、ブレーキもメチャクチャ効きが良いので踏み過ぎてつんのめる。隣で教官の体がガックンガックンしてるのが目に入って申し訳なくなってくる。

 カーブや右左折時、普通車は角に沿う感じで曲がるが、中型車だと車線の半ばまで出てから曲がる感じになることだけは何とか理解した。サイドミラーを見ていると、それで後輪がギリギリ脱輪しない感じである。

2時間目

 2時間連続の予定なので、10分休憩後に続き。「S字に入ってみましょう」と言われるが、相変わらずMTの操作ができずにエンジンはガクガク、後輪は脱輪しまくり。クランクも似たようなもの。

 最後に一通りやっておきましょうということで、隘路と路端停車・発車、方向転換も1回ずつやって終了。最初から補習は見込んでいたが、やはり5時間で出来るとは思えない。辛い。

路端停車・発車

 簡単に聞こえるが、路端と停車位置の前方にポールが立っていて、止まる時に当てないのは当然として、発車時に当てないようにしないといけない。

 前方ポールに当たる奴はいないと思うが、側方のポールは車体後端を当てる危険があることと、それを目視で確認しながら発車しなければならず、意外と面倒。

隘路

 車幅ギリギリの幅で引かれた2本の線の間に右折あるいは左折で入って線内にぴったり止めるというもの。

 文字通り狭い道に入るときを想定しているようだが、右左折から止まるまでの間は線を踏みまくり(というか踏まないのは無理)なので、現実の側溝や壁のある道に応用するのは無理だと思う。

3時間目

 日は変わる。ちなみに、中型限定解除修了検定の課題は、S字、クランク、隘路、路端停車・発車、方向転換である。坂道発進縦列駐車がないだけマシ。

 

 MT車の運転を5時間で出来るとは思っていなかったので、それほど落ち込まずにいられたのは、現状では上々でしょう。これでも精神病んで休職中なので。

 

 基本的な運転と課題は既にやっているので、後はひたすら練習タイムである。半クラと停車時にはさっさとクラッチ切ることを(身体が)思い出して、ブレーキを踏む加減も少しは掴めたらしく、前回を考えると普通に運転できるようになってきた。

 

 S字とクランクで脱輪しなくなったのは大きい。一番難しいのは隘路で、線を踏んで止まるとアウト。切り返しは3回まで出来るが、その時に前と後ろに超えてはいけないラインが設定されていて、そこを超えるとやはりアウトなので、一発で入れたい。ここを一番練習した。

4時間目・5時間目

 MTの操作にもすっかり慣れ(ただし教習所内でちんたらやってていいなら)、中型車そのものの運転感覚も掴んできて、ひたすら検定コースの走行を繰り返すだけ。最初の不安は過剰だったようで、意外と何とかなった感じ。

修了検定

 大特の検定では、一般的な安全確認が足りなくて随分減点されたようなので、信号や交差点、車線変更時など、傍目にもはっきり分かるように左右確認をした。課題は無難にこなすことができた。

 

 総評。左(サイドミラー)の安全確認が不足していたとのこと。ミラーが路端のポールにぶつかりそうで怖かったと言われた。目線で確認してぶつからないと確信していたのだが、試験において目線だけの確認はしてないのと同義だし、何にしても近すぎたらしい。こちらとしては、右側が車線を外れないかの方が気になっていたのだが。

 点数は90点だったので、減点項目に触れるようなことは少なかったようだ。

終わりに

 教習を決める前には、ペーパードライバー講習でマニュアル車の練習をしようかと考えもしたが、案ずるより産むが易し。ほぼ20年前とはいえ、普通車免許を取れる程度にはマニュアル車を運転した経験は死んでいなかったようだ。

 

 しかし、教習車は中型(8t限定)でも運転できるサイズとほとんど変わらないというのは恐ろしい。だって、どう考えてもほとんどの免許所持者は運転できない。

 もちろん、昔の普通車免許も同じ状態だったわけだが、それではいけないということで免許の区分を細分化したのに、旧普通免許所持者全員を中型(8t限定)に移行させたのは愚行としか言いようがない。

 多少手間をかけてでも、中型車を運転していた人だけを中型車免許にして、普通車しか運転しない人は普通免許(現行)にすべきだった。中途半端良くない。

 

 なお、限定解除は免許更新はせず、裏書されるだけらしい。

 

クレーン・デリック運転士免許(限定なし)学科試験を受けた話。

 クレーン・デリック運転士免許の学科試験が、今日行われた(九州以外)。

 

 今まで移動式クレーン運転士の話ばかりしていて、なんでクレーン・デリック運転士なのかというと、移動式クレーンの試験内容を考えると、こっちも簡単にいけそうと思ったから。日程も先だし、予行演習みたいなものである。

クレーン・デリック運転士免許の内容

 クレーン・デリック運転士免許には3種類ある。

限定なし

全てのクレーンとデリックを運転することができる。

クレーン限定

デリックという機械は、基本的に屋外かつ人里離れた場所で使用するマイナーなものなので、クレーンさえ運転できればいい大多数の人向け。

床上運転式クレーン限定

簡単にいうと、運転席のないクレーンに限定されたもの。

 

 

クレーン・デリック運転士免許学科試験の科目

(限定なし)以外の試験には、デリックに関する問題は出題されない。

クレーン及びデリックに関する知識

 移動式クレーンと共通する部分は荷を巻き上げるフックとワイヤーくらいなので、要学習。「クレーン・デリック運転士教本」というのを日本クレーン協会が出しているので購入したが、下記サイトを見ると同じ内容が書いてある。

www.crane-club.com

 デリックは種類も少なく構造も簡単なので、ちょっと手間をかけて(限定なし)を受けた方がいいと思う。実用性は薄いけど限定免許ってダサくない?

関係法令

 クレーンについては多少独自の条文があるものの、基本的に移動式クレーンと構成は全く同じといっていい。デリックも同様。多少用語と数字が違う程度。

 デリック独自の部分はあるものの、過去問をやった限り出題されない。

原動機及び電気に関する知識

 移動式クレーンと同じ名称だけど中身が全く違うから要学習。

 なぜ違うかというと、移動式クレーンの原動機の動力は燃料と油圧なのに対し、クレーンは電気だからである。

 電気に関する部分は概ね共通しているが、こちらは計算問題が1問は出るみたい。並列接続の抵抗値の計算とか電力の計算式くらいは思い出しておかないといけない。

クレーンの運転のために必要な力学の知識

 これは移動式クレーンと共通。なので、移動式クレーン運転士免許を持っていると免除される。逆もまた然り。

 

試験の仕様

 試験時間は2時間30分、1科目免除だと2時間、2科目免除は1時間15分。

 

 合格基準は6割以上、ただし各科目最低4割以上。

 

 試験開始後、1時間経過すると退室できる。

所感

 過去問を解いていたときから分かっていたことだけど、40問解いて20分ちょっとだったので、1時間の缶詰は長かった。とはいえ、本番だしマークシート式だしで、4回も見直しをしたので、まあ良い設定なのかもしれない。

 

 試験の仕様からいって、デリックについて全く知らなくて全問間違えるとしても、クレーンについて普通に回答できれば合格ラインは余裕で超えるので、やっぱり限定取ることないと思う。

 まあ、会社の金で受ける試験でそんなこというと「使いもしないもの取ってどうするんだ」「それで落ちたらどうするんだ」って凄く詰められそうだから、難しいか。

 

 クレーンの運転なんて技能第一に決まってるので、学科試験は余程ヤバい奴を落とすためのものであって、基本的に受かるものだと思う。

 ヤバい奴というのは、これから自分が扱う機械について知ろうという気が全くない(勉強してない)奴と、勉強してるのに全然理解できないレベルの知能の奴。

 

 知識より経験が大事とは思うが、そうはいっても吊り荷5トン以上のクレーンを運転できるようになる免許である。失敗するとね、人が死ぬんですよね。私も昔、10トンのトラス梁を吊って旋回したら、惰性で梁が回って作業員の頭を直撃、ヘルメット毎頭をカチ割って即死という事故を扱ったことがある。

 やはり最低限の知能は必要だろう。

 

 こんだけ舐めたこと言っといて不合格だったら格好悪いな。

移動式クレーンの実技試験をペーパーのまま合格する。

 実技試験の概要は書いたが、やるべきことが分かっても動かし方が分からなければどうしようもない。というわけで、移動式クレーンの運転方法を文字と絵で解説してみようと思う。

nomikikuka.hatenablog.com


運転に使う装置

運転席から見た図

 表示画面の見方

点滅ランプ

 フックの操作レバーを倒してフックが動けば順に点滅を繰り返して動いているのが分かる。普通は高速で点滅しているので気にするものではなく、微操作するときに見るもの。例えば、地切り前に玉掛けワイヤーを張る時。

ジブ長さ

 実技試験では初期設定から動かさないので気にする必要もない。

荷重

 吊っている荷の重さ。初期値はおそらく0.1t。ワイヤーロープを張るとは、この数字が0.2~0.4tになるようにフックを巻き上げることをいう。0.5tになってしまったら地面を離れてしまっているのでダメです。

 地切った後は、この数字が吊り荷質量と同じか+0.1t程度になっていることを確認する。

 ちょくちょく0.1tの誤差が出る理由は、そもそも0.1t未満の数字が切り上げ又は切り下げされて表示されているので、ちょっとした加減でずれてしまうため。異常ではない。

作業半径

 試験では一番重要な数字。ジブを起こしたり倒したりして、試験経路に合わせて増減させる。

 これも0.1m単位の表示になるので、見た目の数字より10cm近くずれている可能性を考えなければいけない。

旋回ブレーキスイッチ

 図に書いてあるとおりで、クレーンを動かす前にオフにする。

操作レバー

 左側に握りが赤いものが1本。これが機体を旋回させるレバー。

 右側に握りが黒いものが3本。左からジブ伸縮、フック上下、ジブ上下に使うが、ジブ伸縮はしないので、試験で使うのは右の2本。

 

 機種によって配置が多少違うこともあるだろうから簡略化しているが、乗ってみたら全然分からん! というほどの違いはないと思う。

 ところで、移動式クレーンのフックは主巻と補巻の2つがあって、試験では主巻を使うのだが、フックの動きを示すランプはスイッチ式でどちらにも使えるようになっている。このスイッチが左側上方についているのだが、そこまで自分でセットさせられるかは不明。

操作レバーの使い方

基本動作

右操作レバー

 手前に引けば上がり、奥に倒せば下がる。このレバーの動きはジブの起伏と一致しているので覚えやすい。

 フックの操作レバーは単独で使う場面が4回ある。

1.最初に荷を上げるとき。

2.コース中にネットを超える前に上げるとき。

3.上記ネットを通過後、下げるとき。

4.ゴール地点で、荷を降ろすとき。

 一方で、ジブの操作レバーを単独で使うことはない。なぜなら、荷の高さを一定に保つためには、同時にフックの操作レバーを使う必要があるから。

 そして、これは最も重要なことだが、フックとジブの操作レバーを同時に動かすときは、必ず互いに反対に倒すことになる。同じ側に倒すことはない。

 言われてすぐピンと来ただろうか? ジブを上げると、荷も持ち上がるので、荷の高さを一定にするにはフックを下げる必要がある。つまり、2つのレバーは逆方向に動かす。ジブを下げる時も同様である。

実際の操作方法

 ジブは下げるときは自重もあってスッと下がるが、上げるときは自重ゆえに動きが鈍いので、下げるときは控えめに、上げるときは大きめに動かす。

 いずれの場合も、いきなりレバーを大きく倒すと、2つの問題が起きるので、荷の高さと作業半径の変化を見ながらゆっくり倒していく

1.ジブが急に動くと、荷も急激に上下して(試験の基準的な)限界を超えてしまう。

2.荷が前後に揺れ始める。試験コースはポールの間を通るので、多少の横揺れは問題ないが、前後の揺れはポール激突の危険が大きく不味い。

旋回の仕方

 移動式クレーンの操作で一番難しいのがここ。いかに荷の横揺れを起こさないかですべてが決まる。

 そして、旋回レバーは前後に倒して操作するのに、実際の動作が左右旋回なので、レバーをどっちに倒すのか直感的に分かりにくく、逆走することも結構ある。何か失敗して焦っていると猶更である。

 なお、旋回レバーには警笛ボタンが付いているので、時間測定の開始、終了は自分で押す。

旋回レバーの操作方法

ブレーキ解除

 上の図は左旋回の場合だが、右旋回でも方向が逆なだけで同じことである。

 レバーは通常時、旋回機構にブレーキがかかった状態になっている(図の

左)。これを軽く倒すと、旋回はしないがブレーキが外れた状態になる(車でいうニュートラル)。そこからさらに倒すと旋回が始まる。

旋回の停止

 旋回を止めるときはレバーを戻せばいいのだが、いきなり初期状態に戻すと急ブレーキと同じで機体がガクガクと揺れる。そして、荷の方もろくな状態にならないので、必ずニュートラルで一旦止める

荷の状態と旋回の関係

荷の揺れ

 旋回を止めたときに起こることを上図に示した。旋回を即止めると慣性で荷が大きく揺れてしまう。この時、ニュートラル状態を保持すると、荷は同じように揺れるが、機体は自由に旋回する状態のため、揺れた荷に引っ張られて自然に同じ方向へ旋回する(図右上)。すると、ブレーキ状態よりも荷の振れ幅が小さくなる(図右下)ので、ここでニュートラルからブレーキ状態にレバーを戻せば、揺れは最小限に抑えられる。

 一応、ここでブレーキではなく旋回させてジブ先端を荷の真上に持ってきて完全に静止させるのが実務上のテクニックらしいが、難しいので素人が試験でやることじゃない。

 旋回距離はそこそこ長いので、止める時以外はそれなりの速度で回して時間を短縮しよう。

荷を降ろす

旋回の停止

 試験コース中の旋回を止めるタイミングは、荷と同じ高さにポールがあるので分かり易いが、最後だけは目印は地面に、荷は高さ2mにあるので合わせ辛い。が、多少のずれは後で直すつもりでざっくり止めればよい。

荷の一旦停止

 旋回停止後、荷を下ろすときは、地上10~20cmで止めるのを忘れないように。この時点で、左右にずれ過ぎていたらわずかに旋回させて位置を合わせる。

着地

 試験を受ける人は初心者で下手なはずなので、おそらく荷は揺れているだろう。これを地面の円内、それも線に乗らないように下さなければならない。地面すれすれ(1,2cm)まで下して、円の中心を通る瞬間を狙って接地させる。失敗してもそれだけで不合格になるほどの減点はないが、時間経過よりは失点するので、慌てず落ち着いて。

終了の合図

 声出し確認などは以前の記事で書いたが、作業終了後に警笛を鳴らさないと時間測定が終わらないので、これを忘れないように。

 

 あと、実技試験は合図の試験もあるので、こっちはちゃんと調べて覚えておこう。

 これを読んだだけで実技受かったら、多分読まなくても受かるくらいにセンスあるよね。

移動式クレーン運転士学科試験

 私の選んだ教習所では、「実技教習のみ」と「実技+学科対策」の2コースあって、差額は24,000円。得体の知れない学科に無対策で突っ込むのは無謀と思って後者にしたが、これは失敗だった。

学科試験の概要

試験会場

 自動車免許を取った人ならご存じのとおり、学科試験は運転免許試験場で受ける。これは、移動式クレーン運転士も同じで、こちらの場合は安全衛生技術センターという場所で受ける。

 そして、運転免許試験場は各都道府県に1つはある(と思う)が、この安全衛生技術センターは、なんと全国で7ヵ所しかない。わーお。

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 北海道、宮城県、千葉県、愛知県、兵庫県広島県、福岡県が選ばれし者たちで、外れた40都府県の人は大変だ。

試験内容

移動式クレーン運転士は次の4つの科目がある。

移動式クレーンに関する知識

・原動機及び電気に関する知識

・関係法令

移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識

五肢択一のマークシート式、各科目10問で計40問。

合格基準は各科目最低4割正解しつつ、全科目で6割正解すること。原動機や力学はともかく、クレーンや法令について半分も理解してない奴が免許取れていいのか、と思わなくもない。

科目の内容

各科目はどのような内容なのか軽く紹介する。

移動式クレーンに関する知識

 移動式クレーンの種類、構造、特徴など。

 クレーンの種類によって異なる安定性の説明、各部の名称、種類に応じた安全対策、運転の仕方などが問われる。

原動機及び電気に関する知識

 原動機とはこの場合はエンジン。ガソリンだとディーゼルだの、4ストだの2ストだのについて、簡単な構造や動作原理、各パーツの説明など。

 そして、移動式クレーンで最も大事な油圧について。

 クレーンがエンジンと油圧で動いているので、電気に関して大したことは聞かれない。日本の電力は50Hzと60Hzがあるとか、交流はACで直流DCだとか。ただ、移動式クレーンは電線に引っ掛けての感電事故が起きるため、その辺は出る。

関係法令

 法律と聞いただけで嫌になる人もいそうだけど、一番紛れがないと個人的には思う。税法や民法と違って解釈が~とか運用が~という話にはならない。

 クレーン等安全規則移動式クレーン玉掛けの部分だけ読めばいい。一部の定義が労働安全衛生法施行令に書いてあるが、ちょっと置換するなりメモ書きすればいい程度なので大丈夫。完璧にしたいなら、労働安全衛生法の免許に関する部分を読んで、免許の欠格事由や書き換え手続き、失効する場合あたりを確認しておく。

移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識

 簡単。ほぼ高校の文理が分かれる前に習う物理レベル。一部に初歩の初歩とはいえ材料工学もあるが、本当に概要だけだから手間はない。

 唯一面倒だと思ったのが、各種材料の密度を暗記しなければならないこと。

鉛:11.4t/㎥

銅:8.9t/㎥

鋼:7.8t/㎥

鋳鉄:7.2t/㎥

アルミ:2.7t/㎥

コンクリート:2.3t/㎥

問題文に書いてることもあるが、この数字を直接聞かれることもある。実務で覚える意味ある?

結論

 3日間、フルタイムで教習所に缶詰にされるのがひたすら苦痛なだけで、学科教習は必要なかった。そこまでの難度はない。

 学科教習を付けると「移動式クレーン運転士教本」と「移動式クレーン標準問題集」という冊子を貰えるが、これは日本クレーン協会が販売していて、送料込みで4千円弱で買えるし、問題集は別に要らない。自分で買って読めば済む。

 ただ、普通の本屋には売ってない。amazonにも売ってない。

 

 というか、何なら本なんて必要なかった。

www.crane-club.com

 こちらのページを読むと、教本とほぼ同じ内容が載っている。そして、過去2回分の過去問なら公式に公開されているから、これで十分。

 

 こんなこと言っといて、試験落ちたら格好悪いな。

移動式クレーン運転士実技

 

 私が選んだ教習所は、毎週月~土にクレーン運転士免許、月に1度月~土に移動式クレーン運転士免許の実技教習をやっていた。そして、最初はクレーンの受講者と一緒にチュートリアルを受けることになった。

 なお、クレーンというのは工場などに設置されている移動しない(若しくは決められたレール上だけを動く)クレーンのことだ。

 

 移動式クレーンは私一人しかいなかったが、クレーンの方は若い工員が4人ばかり職場から派遣されていた。ちゃんと仕事してて、会社負担で資格を取る。本来あるべき姿でしょう。

 

移動式クレーンの実技

 教習に使うのはこういうクレーン車。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Rough_terrain_crane_Kato_MR-130Ri.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Rough_terrain_crane_Kato_MR-130Ri.jpg

実技教習の目標

 免許試験場で受ける一発試験と全く同じ課題をクリアすることが目標で、その課題は下図のように荷物を運ぶことになる。教習は10万、実技試験は1万円なので、実技試験を受けたい人の為に手順を説明しておく。

実技試験
移動式クレーン実技試験の手順

1.移動式クレーンの機種次第だろうが、運転席左側にジブ(クレーンのアーム部分)長さ、作業半径、つり荷の荷重が表示された液晶パネルと旋回用レバー(手前に倒すと右旋回、奥が左旋回、警笛ボタン付き)、右側にジブレバー、フックレバー(共に手前が上げ、奥が下げ)がある。

2.フックに500kgのドラム缶が玉掛けされている状態、作業半径9.0mでスタート。ジブの長さは初期設定のまま進めることになる。

3.「吊り荷質量500kg」と声出し確認玉掛けの状態を確認して「玉掛けよし!」と声出し確認する。この時点で、両手は操作レバーにかけておくので指差しは不要。

4.液晶画面を確認しながらフックを巻き上げ、荷重が0.2~0.4tになったら一旦止める。「(玉掛けワイヤーの)張りよし!」と声出し確認

5.ドラム缶を地面から10~20cm上げて一旦止める。荷重が0.5tを示していることを確認して、「地切りよし!」または「荷重よし!」と声出し確認

6.ドラム缶を2mの高さまで上げる。教習所の試験では高さの目印はなかったが、試験場であるかは不明。ただ、ドラム缶の上から3分の1あたりが目線の高さになるくらい。

7.警笛を鳴らしてスタート。クレーンを右旋回させる。ここから終了までタイムを計り、6分30秒以内に終わらせる。10秒超過毎に減点される。

8.最初のネット付きポールの手前1m以内(ドラム缶の幅2つ以下)で止めて、作業半径が10.5mになるまでジブを下げる。この時、ドラム缶の高さは2mを保つ必要があるので、ジブ下げと同時にフックを巻き上げる。これは作業半径を変える時は常に行う必要がある。

9.作業半径10.5mになったら、ネットを越えられるようにドラム缶を巻き上げ、右旋回して通過する。通過後、すぐにドラム缶を2.0mに下げて右旋回する。

10.次のポール手前1.0m以内で止め、作業半径が9.0mになるようジブを上げる。右旋回して2本のポール間を通す。

11.次のポールに当たる前に止め、作業半径8.0m、右旋回、作業半径10.0m左旋回(折り返し)、作業半径9.0m左旋回でポール間を通す。

12.4本のポールとネットで作られた通路手前1m以内で止まり、作業半径7.9m左旋回で通り抜ける。

13.スタート地点まで戻ったら、作業半径9.0mにし、ドラム缶を地面から10~20cmまで降ろして止める。「一旦停止よし!」と声出し確認

14.スタート地点には二重円が描かれているが、内側の円内にドラム缶を着地させる。線の外に出ると減点。線の上に乗っても減点。

15.着地させたら「着床よし!」と声出し確認玉掛けワイヤーが緩むまでフックを下げて「安定よし!」声出し確認警笛を鳴らす。ここでタイム計測終了。

実技試験の注意点

1.ドラム缶の揺れが1mを超えると減点。目安はドラム缶の幅2つ分。もっとも、そんなに揺れたらポールにぶち当たってるだろうが。

2.ドラム缶の高さ2.0mは、下方に20cm、上方に30cm以上ずれると減点。

3.ポール間を通る際の作業半径は、0.1m程度ずれていても通るだけの余裕があるが、最後のネット間の通過はシビアらしいので7.9mを厳守する。

4.右側の8.0mと10.0mは、それぞれ手前と奥に障害物はないので、多少行き過ぎても問題ない。

5.旋回方向を間違える、つまり逆走すると減点。ポール手前やゴール地点での位置調整や荷の振れを止めるためなら可だと思う。

6.ポールやネットに当たると多分アウト。経路無視してポールの外側を通ったりしてもアウト。

移動式クレーンの運転のための合図

 移動式だけでなく、クレーン全般には運転時の合図というものがあり、これも実技試験がある。

 運転士以外の作業者(主として玉掛け者)がクレーンの作業範囲内にいる場合、クレーンが勝手に動くと危険なので、運転席外部にいる人間が合図を出して、運転士はそれに応じてクレーンを動かすというのが基本である。

 標準的な合図は決まっている。「クレーン 合図」でググれば出てくるので、これを覚えておけばいい。

実技教習

 操作方法を習って、初めて通しで試験コースをやった結果、8分ほどかかった。これが最終的には6分切るくらいまでにはなるのだが、旋回、荷の上げ下げ、ジブの上げ下げの全てをテキパキやっていかないといけないので大変。

旋回

 ゆっくり動かしてゆっくり止まるなら何も問題ないが、スピードを出すと、止まる時にドラム缶が慣性でめっちゃ揺れる。理屈の上では、ドラム缶が進行方向に進み切った瞬間、ジブ先端がドラム缶の直上にくるようちょこっと旋回させると、揺れが止まるのだが、言うは易しである。

 最終的には揺れること前提でマージン取って旋回停止、揺れなきゃラッキー、揺れても気にせず作業半径を変えていくということにした。揺れたままでも再度旋回始めれば、旋回中は止ま(って見え)るから。次こそは止まるように操作する意気で。

ジブ上げ

 ジブという鉄の巨大な棒を動かしているので、下げる時は自重もあってすんなり下がるけど、上げる時は物凄く動きが悪い。下げる時の感覚でレバー操作してると、全然上がってなかったりする。

 なお、フックの上下動とジブの上下動は1つの油圧を共有していて、ジブの方が上流になっている。なので、ジブを動かし過ぎる(油圧を使い過ぎる)と、フックの上下動に使う油圧が不足して荷の高さ調整が上手くできなくなる。動かないからってレバー引きすぎるとドラム缶が跳ね上がってアウトだぜ。

修了試験

 特に問題なく終了した。一瞬だけ、旋回レバーを逆に入れかけたが、動く前に気付いたのでセーフ扱いだった。良かった。

 自動車教習所の修了試験を思うと試験官が優しい気もするが、経路に沿ってポールに当てないよう動かし、枠内に着地させるだけなので、そんなものかもしれない。「交差点で安全確認しろ」とか「路肩や中央線から遠すぎる(近すぎる)」とか、そういう話は出てこないのだから。

 

 この辺は、前提条件の違いだろう。自動車は日常生活に持ち込まれた鉄の凶器だから自らが律しなければならないが、クレーン車は危険な場所で危険な作業をするものであって、その危険から遠ざかるのはむしろ周囲の義務である。

 

 後は、安全衛生技術センターで学科試験を受けて合格すれば、晴れて免許を取得できるぞ。