移動式クレーンの実技試験をペーパーのまま合格する。
実技試験の概要は書いたが、やるべきことが分かっても動かし方が分からなければどうしようもない。というわけで、移動式クレーンの運転方法を文字と絵で解説してみようと思う。
運転に使う装置
表示画面の見方
点滅ランプ
フックの操作レバーを倒してフックが動けば順に点滅を繰り返して動いているのが分かる。普通は高速で点滅しているので気にするものではなく、微操作するときに見るもの。例えば、地切り前に玉掛けワイヤーを張る時。
ジブ長さ
実技試験では初期設定から動かさないので気にする必要もない。
荷重
吊っている荷の重さ。初期値はおそらく0.1t。ワイヤーロープを張るとは、この数字が0.2~0.4tになるようにフックを巻き上げることをいう。0.5tになってしまったら地面を離れてしまっているのでダメです。
地切った後は、この数字が吊り荷質量と同じか+0.1t程度になっていることを確認する。
ちょくちょく0.1tの誤差が出る理由は、そもそも0.1t未満の数字が切り上げ又は切り下げされて表示されているので、ちょっとした加減でずれてしまうため。異常ではない。
作業半径
試験では一番重要な数字。ジブを起こしたり倒したりして、試験経路に合わせて増減させる。
これも0.1m単位の表示になるので、見た目の数字より10cm近くずれている可能性を考えなければいけない。
旋回ブレーキスイッチ
図に書いてあるとおりで、クレーンを動かす前にオフにする。
操作レバー
左側に握りが赤いものが1本。これが機体を旋回させるレバー。
右側に握りが黒いものが3本。左からジブ伸縮、フック上下、ジブ上下に使うが、ジブ伸縮はしないので、試験で使うのは右の2本。
機種によって配置が多少違うこともあるだろうから簡略化しているが、乗ってみたら全然分からん! というほどの違いはないと思う。
ところで、移動式クレーンのフックは主巻と補巻の2つがあって、試験では主巻を使うのだが、フックの動きを示すランプはスイッチ式でどちらにも使えるようになっている。このスイッチが左側上方についているのだが、そこまで自分でセットさせられるかは不明。
操作レバーの使い方
基本動作
手前に引けば上がり、奥に倒せば下がる。このレバーの動きはジブの起伏と一致しているので覚えやすい。
フックの操作レバーは単独で使う場面が4回ある。
1.最初に荷を上げるとき。
2.コース中にネットを超える前に上げるとき。
3.上記ネットを通過後、下げるとき。
4.ゴール地点で、荷を降ろすとき。
一方で、ジブの操作レバーを単独で使うことはない。なぜなら、荷の高さを一定に保つためには、同時にフックの操作レバーを使う必要があるから。
そして、これは最も重要なことだが、フックとジブの操作レバーを同時に動かすときは、必ず互いに反対に倒すことになる。同じ側に倒すことはない。
言われてすぐピンと来ただろうか? ジブを上げると、荷も持ち上がるので、荷の高さを一定にするにはフックを下げる必要がある。つまり、2つのレバーは逆方向に動かす。ジブを下げる時も同様である。
実際の操作方法
ジブは下げるときは自重もあってスッと下がるが、上げるときは自重ゆえに動きが鈍いので、下げるときは控えめに、上げるときは大きめに動かす。
いずれの場合も、いきなりレバーを大きく倒すと、2つの問題が起きるので、荷の高さと作業半径の変化を見ながらゆっくり倒していく。
1.ジブが急に動くと、荷も急激に上下して(試験の基準的な)限界を超えてしまう。
2.荷が前後に揺れ始める。試験コースはポールの間を通るので、多少の横揺れは問題ないが、前後の揺れはポール激突の危険が大きく不味い。
旋回の仕方
移動式クレーンの操作で一番難しいのがここ。いかに荷の横揺れを起こさないかですべてが決まる。
そして、旋回レバーは前後に倒して操作するのに、実際の動作が左右旋回なので、レバーをどっちに倒すのか直感的に分かりにくく、逆走することも結構ある。何か失敗して焦っていると猶更である。
なお、旋回レバーには警笛ボタンが付いているので、時間測定の開始、終了は自分で押す。
ブレーキ解除
上の図は左旋回の場合だが、右旋回でも方向が逆なだけで同じことである。
レバーは通常時、旋回機構にブレーキがかかった状態になっている(図の
左)。これを軽く倒すと、旋回はしないがブレーキが外れた状態になる(車でいうニュートラル)。そこからさらに倒すと旋回が始まる。
旋回の停止
旋回を止めるときはレバーを戻せばいいのだが、いきなり初期状態に戻すと急ブレーキと同じで機体がガクガクと揺れる。そして、荷の方もろくな状態にならないので、必ずニュートラルで一旦止める。
荷の状態と旋回の関係
旋回を止めたときに起こることを上図に示した。旋回を即止めると慣性で荷が大きく揺れてしまう。この時、ニュートラル状態を保持すると、荷は同じように揺れるが、機体は自由に旋回する状態のため、揺れた荷に引っ張られて自然に同じ方向へ旋回する(図右上)。すると、ブレーキ状態よりも荷の振れ幅が小さくなる(図右下)ので、ここでニュートラルからブレーキ状態にレバーを戻せば、揺れは最小限に抑えられる。
一応、ここでブレーキではなく旋回させてジブ先端を荷の真上に持ってきて完全に静止させるのが実務上のテクニックらしいが、難しいので素人が試験でやることじゃない。
旋回距離はそこそこ長いので、止める時以外はそれなりの速度で回して時間を短縮しよう。
荷を降ろす
旋回の停止
試験コース中の旋回を止めるタイミングは、荷と同じ高さにポールがあるので分かり易いが、最後だけは目印は地面に、荷は高さ2mにあるので合わせ辛い。が、多少のずれは後で直すつもりでざっくり止めればよい。
荷の一旦停止
旋回停止後、荷を下ろすときは、地上10~20cmで止めるのを忘れないように。この時点で、左右にずれ過ぎていたらわずかに旋回させて位置を合わせる。
着地
試験を受ける人は初心者で下手なはずなので、おそらく荷は揺れているだろう。これを地面の円内、それも線に乗らないように下さなければならない。地面すれすれ(1,2cm)まで下して、円の中心を通る瞬間を狙って接地させる。失敗してもそれだけで不合格になるほどの減点はないが、時間経過よりは失点するので、慌てず落ち着いて。
終了の合図
声出し確認などは以前の記事で書いたが、作業終了後に警笛を鳴らさないと時間測定が終わらないので、これを忘れないように。
あと、実技試験は合図の試験もあるので、こっちはちゃんと調べて覚えておこう。
これを読んだだけで実技受かったら、多分読まなくても受かるくらいにセンスあるよね。