地方公務員が病んで転落しつつある話

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移動式クレーン運転士実技

 

 私が選んだ教習所は、毎週月~土にクレーン運転士免許、月に1度月~土に移動式クレーン運転士免許の実技教習をやっていた。そして、最初はクレーンの受講者と一緒にチュートリアルを受けることになった。

 なお、クレーンというのは工場などに設置されている移動しない(若しくは決められたレール上だけを動く)クレーンのことだ。

 

 移動式クレーンは私一人しかいなかったが、クレーンの方は若い工員が4人ばかり職場から派遣されていた。ちゃんと仕事してて、会社負担で資格を取る。本来あるべき姿でしょう。

 

移動式クレーンの実技

 教習に使うのはこういうクレーン車。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Rough_terrain_crane_Kato_MR-130Ri.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Rough_terrain_crane_Kato_MR-130Ri.jpg

実技教習の目標

 免許試験場で受ける一発試験と全く同じ課題をクリアすることが目標で、その課題は下図のように荷物を運ぶことになる。教習は10万、実技試験は1万円なので、実技試験を受けたい人の為に手順を説明しておく。

実技試験
移動式クレーン実技試験の手順

1.移動式クレーンの機種次第だろうが、運転席左側にジブ(クレーンのアーム部分)長さ、作業半径、つり荷の荷重が表示された液晶パネルと旋回用レバー(手前に倒すと右旋回、奥が左旋回、警笛ボタン付き)、右側にジブレバー、フックレバー(共に手前が上げ、奥が下げ)がある。

2.フックに500kgのドラム缶が玉掛けされている状態、作業半径9.0mでスタート。ジブの長さは初期設定のまま進めることになる。

3.「吊り荷質量500kg」と声出し確認玉掛けの状態を確認して「玉掛けよし!」と声出し確認する。この時点で、両手は操作レバーにかけておくので指差しは不要。

4.液晶画面を確認しながらフックを巻き上げ、荷重が0.2~0.4tになったら一旦止める。「(玉掛けワイヤーの)張りよし!」と声出し確認

5.ドラム缶を地面から10~20cm上げて一旦止める。荷重が0.5tを示していることを確認して、「地切りよし!」または「荷重よし!」と声出し確認

6.ドラム缶を2mの高さまで上げる。教習所の試験では高さの目印はなかったが、試験場であるかは不明。ただ、ドラム缶の上から3分の1あたりが目線の高さになるくらい。

7.警笛を鳴らしてスタート。クレーンを右旋回させる。ここから終了までタイムを計り、6分30秒以内に終わらせる。10秒超過毎に減点される。

8.最初のネット付きポールの手前1m以内(ドラム缶の幅2つ以下)で止めて、作業半径が10.5mになるまでジブを下げる。この時、ドラム缶の高さは2mを保つ必要があるので、ジブ下げと同時にフックを巻き上げる。これは作業半径を変える時は常に行う必要がある。

9.作業半径10.5mになったら、ネットを越えられるようにドラム缶を巻き上げ、右旋回して通過する。通過後、すぐにドラム缶を2.0mに下げて右旋回する。

10.次のポール手前1.0m以内で止め、作業半径が9.0mになるようジブを上げる。右旋回して2本のポール間を通す。

11.次のポールに当たる前に止め、作業半径8.0m、右旋回、作業半径10.0m左旋回(折り返し)、作業半径9.0m左旋回でポール間を通す。

12.4本のポールとネットで作られた通路手前1m以内で止まり、作業半径7.9m左旋回で通り抜ける。

13.スタート地点まで戻ったら、作業半径9.0mにし、ドラム缶を地面から10~20cmまで降ろして止める。「一旦停止よし!」と声出し確認

14.スタート地点には二重円が描かれているが、内側の円内にドラム缶を着地させる。線の外に出ると減点。線の上に乗っても減点。

15.着地させたら「着床よし!」と声出し確認玉掛けワイヤーが緩むまでフックを下げて「安定よし!」声出し確認警笛を鳴らす。ここでタイム計測終了。

実技試験の注意点

1.ドラム缶の揺れが1mを超えると減点。目安はドラム缶の幅2つ分。もっとも、そんなに揺れたらポールにぶち当たってるだろうが。

2.ドラム缶の高さ2.0mは、下方に20cm、上方に30cm以上ずれると減点。

3.ポール間を通る際の作業半径は、0.1m程度ずれていても通るだけの余裕があるが、最後のネット間の通過はシビアらしいので7.9mを厳守する。

4.右側の8.0mと10.0mは、それぞれ手前と奥に障害物はないので、多少行き過ぎても問題ない。

5.旋回方向を間違える、つまり逆走すると減点。ポール手前やゴール地点での位置調整や荷の振れを止めるためなら可だと思う。

6.ポールやネットに当たると多分アウト。経路無視してポールの外側を通ったりしてもアウト。

移動式クレーンの運転のための合図

 移動式だけでなく、クレーン全般には運転時の合図というものがあり、これも実技試験がある。

 運転士以外の作業者(主として玉掛け者)がクレーンの作業範囲内にいる場合、クレーンが勝手に動くと危険なので、運転席外部にいる人間が合図を出して、運転士はそれに応じてクレーンを動かすというのが基本である。

 標準的な合図は決まっている。「クレーン 合図」でググれば出てくるので、これを覚えておけばいい。

実技教習

 操作方法を習って、初めて通しで試験コースをやった結果、8分ほどかかった。これが最終的には6分切るくらいまでにはなるのだが、旋回、荷の上げ下げ、ジブの上げ下げの全てをテキパキやっていかないといけないので大変。

旋回

 ゆっくり動かしてゆっくり止まるなら何も問題ないが、スピードを出すと、止まる時にドラム缶が慣性でめっちゃ揺れる。理屈の上では、ドラム缶が進行方向に進み切った瞬間、ジブ先端がドラム缶の直上にくるようちょこっと旋回させると、揺れが止まるのだが、言うは易しである。

 最終的には揺れること前提でマージン取って旋回停止、揺れなきゃラッキー、揺れても気にせず作業半径を変えていくということにした。揺れたままでも再度旋回始めれば、旋回中は止ま(って見え)るから。次こそは止まるように操作する意気で。

ジブ上げ

 ジブという鉄の巨大な棒を動かしているので、下げる時は自重もあってすんなり下がるけど、上げる時は物凄く動きが悪い。下げる時の感覚でレバー操作してると、全然上がってなかったりする。

 なお、フックの上下動とジブの上下動は1つの油圧を共有していて、ジブの方が上流になっている。なので、ジブを動かし過ぎる(油圧を使い過ぎる)と、フックの上下動に使う油圧が不足して荷の高さ調整が上手くできなくなる。動かないからってレバー引きすぎるとドラム缶が跳ね上がってアウトだぜ。

修了試験

 特に問題なく終了した。一瞬だけ、旋回レバーを逆に入れかけたが、動く前に気付いたのでセーフ扱いだった。良かった。

 自動車教習所の修了試験を思うと試験官が優しい気もするが、経路に沿ってポールに当てないよう動かし、枠内に着地させるだけなので、そんなものかもしれない。「交差点で安全確認しろ」とか「路肩や中央線から遠すぎる(近すぎる)」とか、そういう話は出てこないのだから。

 

 この辺は、前提条件の違いだろう。自動車は日常生活に持ち込まれた鉄の凶器だから自らが律しなければならないが、クレーン車は危険な場所で危険な作業をするものであって、その危険から遠ざかるのはむしろ周囲の義務である。

 

 後は、安全衛生技術センターで学科試験を受けて合格すれば、晴れて免許を取得できるぞ。